未支給年金の請求

国民年金法 第19条
 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

2、前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。

今週の講義は、国民年金法の第1回目でした。で、未支給年金の請求権者についての解説がありましたが、19条の第2項ってば、ちょっとわかりにくい…っていうよりも、この条文に書かれている家族にはいったいナニゴトが起こっているのでしょう?。具体的にどういった例が該当するのか、考えてみました。

【例 その1】
夫 雅彦(仮名)35歳。
長男の光雄(仮名)6歳。
光雄の母は、光雄がまだ赤ちゃんの頃に病気で他界した。以来、雅彦が男手一つで光雄を育てているのである。
(セリフ)
光雄「パパ、今朝の目玉焼き、またコゲてるよぅ」
雅彦「コゲた所をよけて食べればいいだろ」
…(^^;)。やはり、男一人で育てるのは大変なようだ。そんな様子を見かねた雅彦の叔母 寿美子(仮名) 65歳は、雅彦に再婚を勧めたのである。そしてやって来たのが 芳江(仮名) 32歳であった。子供好きでやさしい性格の芳江は献身的に光雄の世話を行うのであるが、光雄は心を開かない。むずかしい年頃なのである。そこで、雅彦は芳江、光雄と3人で家族旅行を提案した。しかし、この家族旅行が悲劇の始まりなのであった。
家族旅行で、あいかわらず打ち解けない光雄に手を焼きながらの帰り道、居眠り運転のトラックが中央分離帯を乗り越えて家族3人を乗せた車と衝突。幸いにも後部座席に乗っていた光雄は軽傷であったが、運転していた雅彦は即死(芳江に受給権発生)。助手席にいた芳江も重傷、ただちに入院した。
病院で生死の境をさまよう芳江。そんな芳江を一生懸命看病する姿があった。光雄である。本当は光雄はやさしい芳江に感謝していたのである。けれども素直になれなかった。照れくさいキモチもあった。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
(芳江、病床で弱弱しく目を開く)
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
光雄「あ!、マ・・ママ!!」
芳江「光雄・・ちゃん・・。初めてママって呼んでくれたね・・・。ありがとう・・」
ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・・
光雄「ママ、死んじゃイヤだ!。来月のボクの誕生日には、ケーキを焼いてくれるって約束したじゃないか!!。ママ!ママ!!」
ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・・
ピーーーーーー
光雄「ママーーーー!!!」
(光雄に受給権発生)
…って、こんな感じの過酷な運命に翻弄された家族に対する規定なのでしょうか。これで芳江に未支給の遺族年金が発生するっていうのは、ちょっとムリがあるかな。しかし、なんだか書きながら、思わずモライ泣きしそうになりました。カワイソすぎるぞ、光雄。これはもちろん支給してあげて当然といえるでしょう。
ちょっと待てよ。別の例も考えられるな。

【例 その2】
金満家は日本有数の大富豪である。当主であった金満権蔵(仮名)58歳 には3人の子供がいた。一郎(仮名)32歳、次郎(仮名)24歳、三郎(仮名)17歳である。
そして忌まわしい事件は、3ヶ月前、権蔵と後妻となる麗華(仮名)23歳との華やかな披露宴でおきたのである。権蔵がナニモノかに殺害されてしまったのだ(麗華に受給権発生)。
(セリフ)
一郎「ぜったいアノ女が怪しいぜ。そもそも結婚するんだって、オレたちの財産目当てに決まってるんだ」
次郎「そうだよアニキ。いま調べさせているんだがアノ女、タタけば随分ホコリがでそうだぜ。」
三郎「あんなドコの馬の骨だかわからない女に、オレたちの財産を取られちまってもいいのかよ」
そして、ある日、麗華が謎の事故死を遂げるのであった。
(…聖母たちのララバイ流れる)
う〜ん。コッチの方が自然に未支給年金が発生しそうな気がする。この家族にとって、遺族年金なんかど〜でも良さそうだけど。
社労士の勉強してると、なんだかとてつもない人生が、数行でサラッと書かれているコトがありますね。
なお、この日記の“例”はフィクションです。実在する人物・団体とはなんら関係ございません。