保険給付の制限について(刑事施設等に拘禁等された場合)

健康保険法116条〜122条の保険給付の制限について、id:qvvpさんの日記でのやりとりを、なにげなくヨコから見ていた時、ティン!・・・ときたっていうか、心当たりがあるっていうか、でも、話題になっているテキストが何かわからない(^^;のでツボをハズすかも知れず、さすがにヨコッチョからコメントするのも気がひけるし、なんだか解決したようなんですが、ちょっと気になるので、コッソリとトラバってみました(^^;スミマセン。
で、誤解を恐れず(場合によっては間違ってるかもなぁ〜ってコトも恐れず(^^;)書いてみます。“ダレが”刑事施設等に拘禁されたら“ダレの”給付が制限されるかっていうと、次のようになると思います。
(a)“被保険者が”(ナニかをしでかして)刑事施設等に拘禁された場合 → “被保険者の”保険給付は制限される(出ない)・・・(健保法 118条 1項で規定)。
(b)ただし、“被保険者が”(ナニかをしでかして)刑事施設等に拘禁されても、(ナニも悪いコトはしていない)その“被扶養者の”保険給付は制限されない(出る)・・・(健保法 118条2項で規定)。
(c)“被扶養者が”(ナニかをしでかして)刑事施設等に拘禁された場合 → 第118条1項の規定は被保険者の被扶養者について準用する(出ない)・・・(健保法 122条で規定)。
I.D.E社労士塾のテキストも、アノあたりはちょっとわかりにくいというか、ヤヤっこしいのですが、どうやら健康保険法の法律の条文の書き方にクセがあるのが原因のような気がします。健康法では被保険者(被保険者であった者)に対しての給付制限をいろいろ書いた後で、コレとコレとコレとコレをやったら、被扶養者にたいしても準用する・・・って書いてあります。

健康保険法 第122条 
第116条、第117条、第118条第1項及び第119条の規定は、被保険者の被扶養者について準用する。この場合において、これらの規定中「保険給付」とあるのは、「当該被扶養者に係る保険給付」と読み替えるものとする。*1

念のため表にしてみました。<給付制限の元となる行為>
(1)自己の故意の犯罪行為又は故意に給付事由を生じさせた
(2)著しい不行跡によって給付事由を生じさせた
(3)刑事施設等に拘禁された
(4)療養に関する指示に従わない
(5)偽りその他不正の行為により保険給付を受け、又は受けようとする
(6)文書の提出命令拒否等<ダレがした行為に対して制限されるか>

対象者 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
被保険者
被扶養者 ×

上の表の被扶養者の欄で(5)の行為が除かれているのは、もちろん“給付をする”という意味ではなく、おそらく“被扶養者に対して行う保険給付は一つもない(保険給付は被保険者に対して行う)”ので入れる必要がないから・・・ではないかと思います。122条で“保険給付”をわざわざ“当該被扶養者に係る保険給付”に読み替えているのも同様の趣旨ですね。
長々と書いてきましたが、これからが本題です(え〜?(^^;)。“被扶養者が、ナニかしでかして刑事施設等に拘禁された場合、保険給付が制限されますか?”なんて問題は、あまりにもストレートすぎるっていうかミエミエなので心配ないんですが、

ex.1)次の正誤を答えよ
事業主は、『被保険者又はその被扶養者』が刑事施設等に拘禁等されたとき、又はされなくなったときは、5日以内に、所定の事項を社会保険事務所長等又は健康保険組合に届け出なければならない。(法付則32条1項)

・・・なんて問題が出た場合、“被保険者が”ナニかしでかしても、“被扶養者が”ナニかしでかしても、拘禁されたら両方とも同様に保険給付が制限されるのだから、当然、届出は必要だろうなぁ・・・って感じで“○”と判断できればいいんですが、主語を読み飛ばしてしまった上、拘禁等ってトコロに引きづられて『被扶養者に対しては給付制限しないのに、届出いるかぁ?』って判断してしまうとドツボです。あるいは、問題文中『』の部分が空白の選択式が出た場合
・被保険者又は被扶養者
・被保険者又は被保険者であった者
・・・なんて、選択肢が並んでいたら、迷ってしまうかも(“被保険者であった者”は事業主とは関係ないので、気づくかな・・・(^^;)
以上、ご参考になれば幸いです。っていうか、参考にされるばあいは、ほんと〜に書いてる内容が合っているのか、ぜひご確認ください。

*1:追記:給付制限の元となる行為”と122条の条文の数が合わないと思って確認したら、59条に“第59条 保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受ける者(当該保険給付が被扶養者に係るものである場合には、当該被扶養者を含む。第121条において同じ。)に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。”って書いてありました。